自民党総裁選とは

 今話題になっている自民党総裁選ですが、ニュースや新聞では基本的な情報を知ってる前提で記事が書かれており、ニュースの内容がよくわからないと感じている方もいるのではないでしょうか。

 そこで、自民党総裁選について、そもそもの話からわかりやすく解説していきたいと思います。

自民党総裁選がなぜ注目されるのか?

 1つの政党である自民党のトップ(総裁)を選ぶ選挙がなぜここまで注目されるかというと、それはズバリ自民党総裁=内閣総理大臣だからです。

 と、このことについてはみなさん知っているとは思いますが、ではなぜ1つの政党のトップである自民党総裁が日本のトップである内閣総理大臣となるのか?なんとなくは知っているけれども、正確にはわかってないという方が意外と多いのではないかと思いますので、詳しく解説していきたいと思います。

自民党総裁=内閣総理大臣となるのはなぜか?

 そもそも内閣総理大臣はどのように決まるのか。首相官邸のホームページを見てみましょう。

 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。

 指名は単記記名投票で行われ、投票の過半数を得た者が指名された者となる。なお、1回の投票で過半数を得た者がいないときは、上位2人の決選投票を行い、多数を得た者が指名された者となる。

内閣制度の概要 | 首相官邸ホームページ

 このように国会で国会議員による投票を行い、過半数の票を得た人が内閣総理大臣となります。ちなみに「単記記名投票」とは、内閣総理大臣にふさわしいと思う人を1名だけを記入して投票し、投票した人の氏名も記入するという投票方法です。(誰が誰に投票したかがわかるということです。)

 次に現在の衆議院の政党別の議席数を確認してみましょう。衆議院のホームページによると、次のようになります。(令和3年8月11日現在)

政 党    議席数   割合
自由民主党    276   59.4%
立憲民主党    113   24.3%
公明党       29    6.2%
日本共産党     12    2.6%
日本維新の会    11    2.4%
国民民主党     11    2.4%
無所属       10    2.2%
欠員        3    0.6%
計        465   100.0%

 ご覧のとおり現在、自民党が衆議院の議席の約6割を保有しています。この状態で内閣総理大臣指名選挙を行うとどうなるかというと、基本的に各政党の国会議員は自分の政党のトップの名前を記入しますので、半分以上の議席を保有している自民党議員全員が自民党総裁に投票し、過半数を獲得することとなりますので、自民党総裁が内閣総理大臣になるというわけです。

 ここで、国会には参議院もあるのになぜ衆議院の説明しかしないのか?と疑問に思われた方がいるかもしれませんが、今説明した内閣総理大臣の指名選挙については参議院でも同じように行われます。

 しかしながら、参議院での指名選挙については内閣総理大臣を決めるにあたってあまり意味がありません。なぜなら、仮に参議院で自民党総裁以外の人が選ばれたとしても、衆議院の選挙結果が優先されるからです。

 社会の授業で聞いたことがある方も多いと思いますが、これを「衆議院の優越」といいます。先ほどの首相官邸のホームページにも次のように記載されています。

また、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、両議院の協議会を開き、そこにおいても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後10日以内(国会休会中の期間を除く。)に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。

内閣制度の概要 | 首相官邸ホームページ

 ちなみに、現在の参議院の議席数については自民党単独では過半数を保有していませんが、連立与党を組んでいる公明党と合わせると過半数を超えるため、今回の指名選挙については、衆議院と同様に自民党総裁が内閣総理大臣に指名されることになるでしょう。

 このように、衆議院で過半数の議席を保有している自民党の総裁が内閣総理大臣に選ばれるため、自民党総裁=内閣総理大臣となるわけです。

 自民党総裁が内閣総理大臣になるという仕組みについて、ご理解いただけたでしょうか。

自民党総裁選挙に立候補するには?

 次に今回の自民党総裁選がどのように行われるかについて説明したいと思います。

 まず自民党総裁選に立候補するにはどすればいいのでしょうか。自民党のホームページを見てみましょう。

・総裁選挙の候補者になることができるのは、党所属の国会議員です。

・候補者となるには党所属国会議員20名の推薦が必要です。

総裁選挙の仕組み

 自民党の国会議員は衆議院と参議院を合わせて382人いますので、その内の20人からの推薦を得た国会議員のみが立候補できる仕組みとなっています。

総裁選挙の投票はどのように行うのか?

 立候補者が複数出た場合は自民党内で、選挙を行い、総裁を決定します。(立候補が1名しかいない場合は、無投票当選となります。)

 その選挙では「議員投票」と「党員投票」の2種類の投票が行われ、2つを合わせた得票数で総裁を決定します。先ほどの自民党ホームページを再度見てみましょう。

・議員票は当所属国会議員が単記無記名で1人1票を投じます。

・党員票は都道府県ごとに開票し、党本部において合算します。各候補者の得票数を基に、党所属国会議員数と同数の票(総党員算定票)をドント方式により各候補者に配分します。

総裁選挙の仕組み

 つまり自民党の国会議員投票による382票と党員投票による382票を合わせた764票で投票が行われることとなるのです。

 ちなみにドント方式とは、各候補者を得票数を整数で順番に割っていき、その数が大きい順に票を割り振っていくというものですが、ざっくりと各候補者を得票数の割合に応じて382票を割り振るのだと思ってもらえば結構です。

 この投票の結果、過半数を獲得した候補者がいればその人が総裁に決定しますが、誰も過半数を達しない場合は、上位2名による決選投票が行われます。

 決選投票では382人の国会議員が再度上位2名のどちらかに投票をします。党員については、その場で再度投票ができないため、各都道府県に1票が割り振られ、決選投票の2名のうち党員投票で獲得した票が多かった候補者に投票されます。

 したがって合計429票のうちより多くの票を獲得した候補者が自民党総裁に決定します。

 このように自民党総裁は決まるのです。投票方法など少し細かい話もありましたが、総裁選挙の仕組みについてご理解いただけたでしょうか。

まとめ

 自民党総裁選挙が注目されるのは、この選挙により日本のトップである内閣総理大臣が決まるからです。

 あらためてそう思うと各候補者の掲げる政策や日本をどのようにしていきたいと考えているかなどについて、より興味が出てきたのではないでしょうか。

 次の内閣総理大臣の打ち出す政策によっては、生活が大きく変わる人も出てくるかもしれません。この記事をきっかけに少しでも普段のニュースに興味を持ってもらえたらとても嬉しいです。

 各候補者の政策などについても、また別の記事で解説したいと思っています。

【おまけ①】内閣総理大臣には衆議院議員しかなれないの?

 この記事では内閣総理大臣は「国会議員」から指名されると説明しましたが、国会議員には「衆議院議員」と「参議院議員」がいます。

 制度上は参議院議員でも内閣総理大臣になれることになっていますが、第二次世界大戦以降、現在の制度になってから、参議院議員から内閣総理大臣が指名された例はありません。

 それはなぜかと言うと、内閣総理大臣には衆議院を解散する権利がありますが、解散の影響を受けない参議院議員が衆議院を解散するのはおかしいというのが大きな理由だと言われています。

 また、記事でも少し触れましたが、内閣総理大臣の指名以外にも「衆議院の優越」となるものがいくつかあり、基本的に国会は衆議院が中心となっています。参議院はあくまで衆議院を補完する役割であり、言い方は悪いですが、衆議院より格下であるというのも理由の1つだと思います。

 そのため、自民党総裁選へ立候補するのも基本的には衆議院議員のみです。(過去には参議院議員から立候補した人が1人だけいるようですが。)

【おまけ②】自民党総裁選は民意を反映しているのか?

 この記事で説明したとおり、自民党総裁選挙は議員投票と党員投票の2種類の投票結果により決定します。

 通常はこのように選挙が行われますが、前回の選挙で菅総理大臣が総裁に選ばれたときには新型コロナウイルスの影響により、党員投票が行われませんでした。

 そのため、一部では総裁選に「民意が反映されていない」との批判がありました。

 今回の総裁選で投票権を持つ自民党員は約110万人いるそうです。110万人もの人の意見を選挙という形で反映できるというのは確かに影響が大きいと思います。

 しかし、国会議員が選挙で選ばれた「国民の代表」であるのに対して、自民党員は選挙で選ばれたわけでもなんでもありません。

 その党員の意見が総裁選に反映されたからと言って、「民意が反映された」とまでは言えないのではないかと思います。

 もちろん党員投票をしないと決めた自民党に対して自民党員が批判するのは当然の権利だと思いますが、それ以外の人が「民意が反映されていない」などと批判するのは少しおかしいのではないかと個人的には思いました。

 少し話がそれてしまいました。肝心の自民党総裁選挙に民意が反映されているかということですが、今回は議員投票と党員投票により総裁が決まります。

 議員投票を行う国会議員は選挙で選ばれた「国民の代表」です。党員票も選挙に影響しますが、決選投票の方法を見ても党員票より議員票のウエイトが高くなっていると思いますので、選挙で選ばれた国会議員が中心に自民党総裁(=内閣総理大臣)を選んでいるということとなり、必要十分な民意は反映されているのではないでしょうか。

コメント

  1. […] […]

  2. […] […]

  3. […] […]

タイトルとURLをコピーしました