自民党総裁選 各候補者の政策解説【経済政策編】

自民党総裁選の候補者は?

自民党総裁選に立候補した各候補者の政策について、解説していきたいと思います。総裁選の仕組みについては別の記事て詳しく説明していますので、よければ参考にしてください。

 さて、今回の自民党総裁選には次の4人が立候補しました。

①河野太郎 行政改革担当大臣

②岸田文雄 前政調会長

③高市早苗 前総務大臣

④野田聖子 幹事長代行

菅総理大臣が総裁選に立候補しないこととなりましたので、新しい総理大臣がこの中から誕生します。

 それぞれの候補者が掲げている政策には様々なものがありますが、全てをまとめて説明してもわかりにくいと思いますので、テーマごとに解説していきます。

 まず最初は皆さんの生活に1番影響がある「経済政策」についてです。

各候補者の役職ってわかりますか?

 本題に入る前に各立候補者の役職について簡単に説明します。説明が不要な方は読み飛ばしてくださいね。

 上で書いたように各候補者をニュースで取り上げるときに、氏名+役職で呼ばれることが多いと思います。当たり前のように「行政改革担当大臣」や「幹事長代行」と使われていますが、これがどんな役職なのかよくわからないという方もいると思いますので、解説していきます。

①河野太郎 行政改革担当大臣

 まずは「行政改革担当大臣」です。「大臣」というのはよく聞くと思いますが、基本的には各省庁のトップのことです。財務省、外務省など現在12の省があり、それぞれ大臣がいます。また、庁としては、デジタル庁、復興庁にも大臣がいます。(他には警察庁を管轄する国家公安委員会にも大臣がいます。)

 これらの省庁が所管している業務以外に総理大臣が特に力を入れたい重要政策を実現するために設けられるのが「担当大臣」です。

 行政改革担当大臣とは、縦割り行政や非効率な行政などを解消し、役所の業務をより皆さんにとって便利になるように改革するために設置された役職になります。

(正確には法律に定められた「内閣府特命担当大臣」と法律に基づかない「担当大臣」の2種類がありますが、特段の違いはないので、一緒のものとして説明しています。ちなみに行政改革担当大臣は正確には内閣府特命担当大臣です。)

②岸田文雄 前政調会長

 「政調会長」は正式には「政務調査会長」といいます。官房長官や大臣は内閣の構成員であり、簡単に言うと日本政府の一員です。

それに対して政調会長はあくまで自民党内での役職になります。総裁に次ぐナンバー2の「幹事長」に加え、「政調会長」、「総務会長」、「選挙対策委員長」を合わせて党四役と言われており、自民党の幹部ということです。

 国会に提出される法律や予算案は事前に自民党の政務調査会で承認を得る必要があります。その政務調査会のトップが政調会長です。このあたりはイメージが湧きづらいので、自民党の偉い人だと思ってもらえてばいいかと思います。

 菅内閣の前の安部内閣時代に政調会長を務めていたので、「元政調会長」という肩書きで呼ばれています。

③高市早苗 前総務大臣

「前総務大臣」はわかりやすいと思います。現在の菅内閣では大臣にはなっていませんが、その前の安倍内閣で総務大臣を務めていましたので、「前総務大臣」と呼ばれています。

④野田聖子 幹事長代行

 幹事長代行は政調会長と同じように自民党内の役職です。ナンバー2である幹事長の下に野田聖子幹事長代行、3人の幹事長代理、25人の副幹事長がいますが、その中のトップが幹事長代行のようです。

 序列でいうと自民党内で何番目になるのかは調べてもよくわかりませんでしたが、ナンバー2の幹事長を補佐する役割であり、自民党の幹部ということのようです。

各候補者の経済対策の比較

各候補者の経済対策をみていきましよう。まとめると以下のようになります。なお、政策については基本的に各候補者のホームページから抜粋しています。そのため、あまりニュースなどで取り上げられてないものもありますが、わかる範囲で説明していきたいと思います。

候補者 経済政策
河野 太郎 ・ デジタル、グリーンをイノベーションの核として日本の稼ぐ力を伸ばす
・ イノベーションを担う人材と資金の好循環を目指す
岸田 文雄 ・新自由主義からの転換
・成長と分配の好循環による「令和版所得倍増」を目指す
・子育て世帯にとって大きな負担となっている住居費・教育費について、支援を強化
高市 早苗・「金融緩和」「緊急時の機動的な財政出動」「大胆な危機管理投資・成長投資」を総動員して、物価安定目標2%を目指す
・物価安定目標2%を達成するまでは、時限的に「PB(基礎的財政収支)規律」を凍結し、戦略的な財政出動を優先させる
野田 聖子・「子どもの教育」への投資は100%リターンのある「最強の成長戦略」

 新聞やネットニュースなどでも同じようにまとめたものを見たことがある人も多いと思いますが、正直、これだけではよくわからないと感じる方が多いのではないでしょうか。なのでこれからできるだけわかりやすく解説して行きたいと思います。

そもそも経済政策ってなに?

 もう1つ本題に入る前に話をさせてください。これも説明が不要な方は読み飛ばしてもらって構いません。

 経済政策という言葉がよくニュースなどで使われていますが、具体的にどういう政策なのかと言いますと、大きく2つに分けられると思います。

 1つ目は「財政政策」です。これは広い意味では政府が行う支出全てを指します。政府が支出するということはそのお金が皆さんや企業の収入となり、その収入を基に色々な物を買ったりすることで、経済が循環していきます。政府が財政支出することにより社会全体として収入が増やそうとする政策が財政政策です。

2つ目は「金融政策」です。代表的な政策としては金利の調整があります。金利が高くなればお金を借りたときに返さないといけない金額が大きくなります。そのため、企業はお金を借りて新しい工場を作るなどの投資を控えることになります。

 逆に金利を低くすれば、返さないといけない金額が少なくなるため、お金を借りて新しい工場を作るなど事業を拡大しやすくなります。

 事業が拡大できれば、企業の収入も増えます。収入が増えれば新たな設備投資や給料が上がった従業員の消費の需要が増えます。その結果、商品が足りなくなり、物価が上がります。この状態をインフレといいます。

 反対に金利が上がれば、借りる人が少なくなり、事業が拡大できず、設備投資や消費の需要が減り、物価が下がってしまいます。この状態をデフレといいます。

 このように金利を調整することで物価を調整しインフレまたはデフレになり過ぎないようにできるのです。

もう1つの金融政策としてはマネタリーベースの調整です。マネタリーベースとは通貨供給量のことで、世の中に流通している現金と銀行に預けている貯金を合計したものです。

 例えば各銀行が持っている国債を日本銀行が買い取ることで銀行はお金を手にします。銀行はお金をただ持っていても仕方がないので、少しでも誰かに借りてもらおうとして、積極的に貸し出しを行います。

 その結果、企業は事業が拡大できて、設備投資や消費の需要が増え、物価が上がるインフレになります。

 反対に各銀行が日本銀行に預ける金額を増やすような政策を行えば、銀行の手元のお金が減るため、なかなかお金を貸せなくなり、デフレにすることができます。

 経済の成長には緩やかなインフレが好ましいとされていますので、これらの政策を組み合わせて緩やかなインフレになるように調整する政策が経済政策です。(財政政策も支出を増やせば新たな投資や消費需要が増え、インフレにできます。逆に少な過ぎればデフレになってしまいます。)

 前置きが長くなってすみません。それでは各候補者の経済対策について見ていきましょう。

①河野太郎氏の経済政策

「デジタル、グリーンをイノベーションの核として日本の稼ぐ力を伸ばす」

 コロナ禍で重要性が増してきているデジタル分野、2050年までのカーボンニュートラル達成に向け脱炭素社会を進めるためのグリーン分野、この2つの分野を成長させることで新たな需要を生み出し、経済成長をさせようということのようです。

 ちなみに「カーボンニュートラル」とは家庭や工場、車、発電所などから排出される二酸化炭素を植物の光合成などにより吸収される二酸化炭素と同じ量まで減らすことで二酸化炭素の排出をプラスマイナスゼロにするというものです。

具体的な方法はまだよくわかりませんが、この分野に多くの財政支出をするというよりは、規制を緩和することで多くの企業が参入できるようにして、成長を促すとい感じでしょうか。

正直漠然としていて具体的にはよくわかりません。河野氏もこれについて詳しく説明しているのを見つけることができませんでした。

「イノベーションを担う人材と資金の好循環を目指す」

 上の政策と繋がるのだと思いますが、デジタルやグリーン分野を成長させるには、人材の育成が必要になります。

ICTなどのデジタルに詳しい人などの人材育成が進まなければ、デジタル分野を成長させることができないので、そういった人材の育成に力を入れるのでしょう。

また、資金の好循環ということで、これらの分野に新たに参入する企業などが銀行からの借り入れなどの資金調達をしやすくなるような規制緩和を行う。もしくは、国が自ら予算を確保して政府が低金利で貸し付けを行うのでしょう。

これについても、河野氏が説明しているものが見つからなかったので、推測になってしまい、申し訳ありません。

 これが経済対策です!とわかりやすい政策を打ち出しているというよりは、年金等の社会保障制度改革、出産、子育て支援などを広い意味での経済対策と捉えて主張をされているように思います。

 上でも説明しましたが、政府の支出は全て財政政策であり、経済政策になります。広い意味で捉えると多くの政策が経済政策となってしまいますが、この記事では経済対策としてわかりやすいものをピックアップしていますので、わかりにくいと感じる方がいましたら、申し訳ありません。

②岸田文雄氏の経済政策

「新自由主義からの転換」
「成長と分配の好循環による「令和版所得倍増」を目指す」
「子育て世帯にとって大きな負担となっている住居費・教育費について、支援を強化」

 岸田氏の経済政策として3つを挙げましたが、この3つは繋がっていますので、まとめて説明していきます。

まずは「新自由主義」について説明します。新自由主義とは、財政支出の削減、規制緩和、民営化などを進めることにより「小さな政府」を目指すものです。国がいろいろな事業をやったり、規制をしていると、企業は自由に活動ができません。

できる限り国が経済に関わるのはやめて、企業が自由に活動できるようにすることで、経済を発展させていくというものです。簡単に言うと国は余計なとこはしない方が経済が上手く行くという考え方になります。

日本では1996年に誕生した橋本龍太郎内閣から進められ、基本的に現在の菅内閣まで続いてきた考え方です。この考え方に基づいた改革は「構造改革」と呼ばれました。「構造改革」といえば2001年に誕生した小泉内閣が有名ですね。

 このように自由な市場に経済を任せた結果どうなったかといいますと、競争力の強い企業はより強くなり、弱い企業が淘汰されていきます。岸田氏の言葉を借りると「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断」を生み出してしまいました。

岸田氏は規制緩和などの構造改革自体は「我が国経済の体質強化と成長をもたらしました」、と評価しています。しかし、格差が広がってしまったため、その格差を縮小させるように分配を行うことで消費、需要を盛り上げていくという考えです。それを「新自由主義からの転換」、「新しい日本型資本主義」と呼んでいます。

また、「令和版所得倍増計画」と言うことですが、「所得倍増経済」は1960年の池田勇人内閣が掲げた計画です。当時は高度経済成長期でしたが、10年間で国民の所得を倍にするという目標を掲げて、実際に達成しています。

同じように国民の所得を増やすためには、金持ちがもっと金持ちになるのではなく、中間層と言われる金持ちでも貧乏でもない層を増やす必要があります。現在、格差が広がり、貧乏人となってしまっている人を中間層に押し上げるような政策が必要です。

そのための配分として、子育て世代の住居費、教育費の支援、また、看護師、介護士、保育士の給料を増やすことなどを行うとのことです。

また、現在はデフレでモノが売れませんし、値上げもできません。企業がコストカットを行おうとするとどうしても立場の弱い下請けの中小企業に皺寄せがいってしまう。

 日本の労働者の7割は中小企業に勤めていますので、下請けの中小企業が儲からないと多くの労働者の給料が上がりません。このような下請けイジメのようなことを行わせないような取組も一緒に行うことも行うとのことです。

③高市早苗氏の経済政策

「金融緩和」「緊急時の機動的な財政出動」「大胆な危機管理投資・成長投資」を総動員して、物価安定目標2%を目指す

「金融緩和」は前安倍内閣から続けられてきた経済政策であるアベノミクスの目玉でした。マネタリーベースと言われる通貨流通量を増やして、金利を引き下げることで、企業などがお金を借りて新しい工場を作って事業を拡大しやすい環境を作るというものです。高市氏は基本的にアベノミクスを継承するということのようです。

また、危機管理投資ということで、主に災害に強いインフラ設備への投資を積極的に行います。インフラとは道路や電気、ガス、水道、港やダムなど生活に欠かせない施設のことです。最近は台風や豪雨などの災害により川の堤防が決壊するなど、様々な被害が起きています。また道路や水道などは高度経済成長期に大量に作られたため、作り替えたり、補修の必要があるものがたくさんあります。

 こうしたインフラが安全に整備されていないと日本に住みたいと思わなくなってしまいますし、企業も安心して事業を拡大することができません。サイバー攻撃への対策などみなさんが安心して暮らせるように様々な投資を行うようです。

このような様々な投資による財政政策とアベノミクスから続いている金融緩和の2つを組み合わせて物価安定目標2%という緩やかなインフレを目指します。

「物価安定目標2%を達成するまでは、時限的に「PB(基礎的財政収支)規律」を凍結し、戦略的な財政出動を優先させる」

様々な投資を行うことを政策として高市氏は掲げていますが、財政支出には財源が必要になります。皆さんも聞いたことがあると思いますが日本の借金である国債の残高は現在約1,000兆円にもなります。

借金を減らすためには収入よりも支出を少なくしなければいけません。国債を除いた収入で国債の返済以外の支出をすべて賄うことができれば国債を減らしていくことができます。これをPB(プライマリーバランス)の黒字化といいます。

岸田氏ところで説明した新自由主義では財政健全化のため、出来るだけ財政支出を削減しようとしてきました。しかし、皆さんもご存知のようにバブル崩壊以降日本経済は成長できていません。

高市氏はプライマリーバランスの黒字化というこれまでの内閣がずっと掲げてきた目標を、物価安定目標が2%を達成するまで凍結すると言っています。

財政支出を増やすことによりインフレにすることができます。ただ税金などの収入だけでは足りないため、国債を増やして対応することになりますが、借金が増えるのは承知で積極的に財政支出を拡大していく必要があると主張しているのです。

④野田聖子氏の経済政策

「子どもの教育」への投資は100%リターンのある「最強の成長戦略」

野田氏は様々な「パラダイムシフト」を政策として掲げています。パラダイムシフトとは社会全体の価値観を大きく変えることをいいます。その中で経済政策としては子どもへの投資を行うとのことです。

貧困により教育を十分に受けられない子どもへの支援、また、子どもを産み育てやすい環境を作ることにより、子どもが幸せな社会を実現します。

子どもの教育水準が上がれば、しっかりした教育を受けた子どもが大人になったときに日本経済の成長に貢献してくれます。これらの政策を一元的に進めるために「子ども庁」を設立するとのことです。

また、将来、経済的な余裕がある人が増えれば、子どもを作ろうと思う人も増えるはずです。子どもを産み育てやすい環境を作ることと子どもの教育に力を入れていけば、人口減少の対策にもなります。

人口が多ければそれだけで、需要や消費が増えますし、企業としても従業員を確保できるようになり、人手不足の解消にも繋がります。経済成長をしていく上で人口が多いということは有利です。

まとめ

4人の経済政策を見てきました。岸田氏と高市氏が経済政策に力を入れていて、河野氏と野田氏はそこまでではないのかなとの印象を受けました。

僕が個人的に良いと思ったのは高市氏の経済政策です。

バブル崩壊以降日本経済はずっと成長できないまま20年以上が経ちました。この間、世界のほとんどの国々で所得(GDP)が倍以上に増えているなか日本は減少してしまっています。この原因は日本がずっとデフレであったからです。

デフレを脱却するために金融緩和は進められましたが、それだけでインフレにすることはできていません。この20年以上の経済状況を見ていると、やはり大規模な財政支出を行わなければ、デフレを脱却ことはできないと思います。

いかがだったでしょうか。各候補者の政策についてご理解いただけましたか?

コメント

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