京王線刺傷事件

2021年10月31日、京王電鉄京王線の車内で乗客の男が他の乗客を刃物で切りつけた上、ライターオイルを撒いて火をつけるという事件が起きました。この事件について解説していきたいと思います。

事件の概要

事件は2021年10月31日午後8時頃、東京都調布市内を走行中の京王電鉄京王線新宿行き特急列車内で起きました。

犯人は3両目で座っていた男性の胸を隠し持っていたナイフで刺した後、5両目に移動し、ペットボトルに入れたライターオイルを車内に撒き、火をつけました。

被害者は17名でナイフで刺された1名が意識不明の重体、他16名は軽症のようです。刺されたのは1名だけで、他の16名は火災の煙を吸ったことや逃げるときに転倒したことによるケガだということです。

なお、犯人は犯行後も電車内に残っており、その場で殺人未遂容疑により現行犯逮捕されました。

犯人の目的は?

逮捕された服部恭太容疑者(24)は犯行動機として、「今年6月ごろに仕事で失敗し、友人関係もうまくいかず、死にたかった。自分では死ねないので、2人以上殺して死刑になりたかった」と話しているようです。

「非常用ドアコック」と「ホームドア」の問題とは?

今回の事件で電車内の乗客がドアからではなく窓から避難することとなり、避難に時間がかかったという問題がありました。その原因と言われてニュースなどによく出てくるのが「非常用ドアコック」「ホームドア」です。

まず「非常用ドアコック」とは電車内のドアの近くに設置してあるもので、カバーの蓋を外してレバーを引くことでドアを手動で開けられるようになるというものです。非常時に電車内からドアを開けられる仕組みです。

次にホームドアです。最近、設置されている駅が増えてきていると思いますが、ホームからの転落や電車との接触を防止するためのものでホーム側のドアは電車が停車したときにだけ開きます。

今回の事件では、非常用ドアコックが作動したのを運転手が確認したため、最寄りの駅に緊急停車することとなり、国領駅に停車しましたが、緊急停車だったことから通常の停車位置から2m程ズレて停車してしまいました。(車内の非常通報装置も押されたものの、押した人が避難してしまい通話が出来ず、車内で何が起きているかはわからなかったようです。)

国領駅はホームドアが設置されている駅ですが、停車位置がズレるとホームドアと電車のドアの位置がズレてしまいます。そのような状況で電車のドアを開けてしまうと乗客が安全に降りられないと判断し、京王電鉄はドアを開けませんでした。

ドアが開けられなかったため、乗客を窓から避難させる方向で対処することとなったのです。

この事件を受けた国の対応は?

今回の事件では上でも説明したように「非常用ドアコック」や「ホームドア」の問題がありました。京王電鉄が現場で判断を下すのはとても難しかったと思います。

この事件を受けて国土交通省は2021年11月2日に大手鉄道事業者と再発防止に向けた緊急会議をオンラインで行い、会議での議論を踏まえ次のような指示をしました。

○異常が発生して緊急停車した駅でホームドアと電車のドアがずれた場合、両方のドアを開けて避難誘導することを基本とする

複数の非常通報装置が押された場合などは、通話なしでも緊急事態と認識して周辺の他の電車の停止を行うこと

警察と連携しての警戒監視を徹底すること

車内に防犯カメラの設置を!

鉄道事業者との緊急会議では上に書いた指示事項以外に今後、車内に防犯カメラを設置することについての検討も求めています。

僕の個人的な意見ですが、防犯カメラを設置することが1番重要な対策ではないかと思います。なぜなら車内の状況を把握できなければ、どのように対応という判断ができないと思うからです。

今回のような事件が起きた場合の対応に正解があるのであれば、その方法を守ることを徹底すれば対策できます。しかし、全く同じ事件が起きることはないですし、今後、どんな事件が起こるかわかりません。

難しい判断になるでしょうが、事件事故が起きた際に鉄道事業者には臨機応変な対応が求められるため、何より重要なのは、いち早く状況を把握することです。国土交通省は監視や警戒の強化を求めていますが、「人」で対応するのは現実的ではないと思います。

電車内の防犯カメラも進化しており、今は蛍光灯と一体化した防犯カメラもあるようで、車内の蛍光灯を交換するだけで設置ができます。東急電鉄では2019年から試験的に導入し、2020年には全車両に設置を完了しているそうです。

防犯カメラの設置により痴漢やスリなどの犯罪の抑止にもなりますし、痴漢冤罪事件の証拠にもなります。もちろんプライバシーの問題があるため、鉄道事業者には映像データの適切な管理が求められますが、メリットの方が多いのではないでしょうか。

国土交通省には鉄道事業者に任せるだけではなく、防犯カメラの設置を義務化するなど積極的な対応を期待したいです。

まとめ

電車内での無差別刺傷事件といえば2021年8月6日にも小田急電鉄小田原線車内でも発生しました。電車内という密室での事件だと逃げ場も少なく、とても恐ろしいと思います。

電車は持ち物検査もありませんし、誰でも簡単に乗れますので、今回の事件のように悪意のある人がいれば、同じような事件がいつどこで起きてもおかしくありません。事件がなくならない以上は、迅速に避難できる体制を整えるのが重要です。

少なくとも今回の京王電鉄の対応は批判されるほど悪いものではなかったと思います。

僕にはどのように対応するのが正解だったのかはわかりません。確かに乗客が窓から避難している映像を見ると、もっと良い対応があったのではないかという気はしますが、そんな「気がする」というだけで京王電鉄を批判するのは間違っています。批判するのであれば、具体的に対応のどこが間違っていて、どうすれば良かったのかということを指摘しなければならないと思います。

今後、事件の対応についての検証が進んでいくと思いますが、この事件を教訓として、これから同じような事件が起こったときには、乗客がより安全に避難できるような対応ができるようになってくれると嬉しいです。

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